Tokyo Demo Fest 2015 に参加してきたので写真も交えてレポートします!
会場の雰囲気や作品を紹介!
今回は、先日行われた日本で唯一の本格的なデモパーティー、Tokyo Demo Fest 2015 の様子をレポートします。
今年は 5 周年ということもあり、たくさんの参加者とたくさんの作品が集まりました。私は初参加だったのですが、はじめてのデモパーティーで感じた雰囲気や、当日の様子を写真でレポートしてみたいと思います。
デモシーンの世界にちょっとでも興味のある方々に、少しでも参考にしていただけたらと思います。
何より楽しく充実した二日間!
三年連続で会場となったアンスティチュ・フランセ 東京。
デモシーン(DemoScene)と言われてもピンとこない人のために簡単に説明すると、コンピューターグラフィックスと音楽を組み合わせて、美しい 3D の映像作品に仕上げたものを一般に デモ と呼びます。必ずしも 3D でなければならないということではありませんが、比率としては 3D の作品のほうが多いでしょうか。
そんなデモ作品を持ち寄り、楽しくわいわいやりつつ、食べたり、飲んだり、議論したり……最後には持ち寄った作品をみんなで鑑賞する、それが デモパーティー です。様々なプラットフォーム別に作品を投稿したり、あるいはサウンドだけを投稿したりといったように、いくつかの部門が設けられていることもあります。
Tokyo Demo Fest でも、Music Compo と呼ばれる音楽の部門や、GLSL と呼ばれるシェーダ言語を使ってデモを作成する部門などがあり、それぞれに作品を出展できるようになっていました。
GLSL Graphics Compo 優勝作品 shell by fms_cat
土曜日と日曜日、二日間にわたって行われた Tokyo Demo Fest ですが、当日に会場で、これから出展するデモをモリモリと制作している人たちもたくさんいました。空き時間は基本的に自由に過ごすことができるので、作品を制作するもよし、会場にいる 3DCG 界の猛者たちと戯れるもよし、とにかく肩の力を抜いて楽しくやろう! という雰囲気がすごくよかったです。
また、3DCG や楽曲作成などの、デモシーンで役に立つ知識が得られるセミナーもタイムテーブルに組み込まれていました。
会場のレストランで行われた GLSL だけで寿司を描いてしまおうという面白いセミナーの様子 by gyabo
上の画像では、スクリーンは遠くてよく見えないと思いますが、リアルタイムに GLSL を記述しながら、少しずつシェーダだけで寿司を完成させていく GLSL 職人芸を間近で見ることができました。
またわかる人はわかると思いますが、左端のほうには MSX も映ってますね。
会場となったレストランの中には、Oculus Rift や MSX なども置かれており、古き良き時代と最先端を同時に感じることができる貴重な空間になっていました。
デモのために作るエレクトロミュージック by T_S
こちらは施設に併設されているシアターホールで行われたセミナーの様子です。スクリーンがさらに大きくなり大迫力! こちらも GLSL のセミナーと同じように、少しずつカッコいい曲が出来上がっていく様子を間近で見ることができ、作曲のスキルがまったくない私としては大いに感激しました。
デモシーンには、優れたグラフィックだけではなく優れたサウンドが欠かせません。やはり音と映像のシンクロが素晴らしい作品は、少し違う次元に到達する感じがあります。作曲の経験はありませんが、すごく楽しいセミナーでした。
大迫力のサウンドと大迫力のスクリーンでデモを鑑賞できる Demo Show の様子
自分自身でデモを作った経験がなくても、デモショーやセミナーを見ているだけで十分楽しめるように工夫されているなと感じました。
作品を出展しなくても、けしてそのことによって肩身の狭い思いをすることもありませんし、デモパーティーというくらいですから気軽にノリで参加してしまうのがむしろ正解です。来年はもっと参加者増えてくれたらいいなあ。
GLSLによる実践的なレンダラの実装 by Toshiya Hachisuka
こちらは蜂須賀先生の超ためになる実践的な 3DCG のセミナーの様子です。
どういう原理で動いているのか蜂須賀先生もわからないという、謎のノイズ関数なども登場し会場を沸かせました。もちろん、私のような素人から独学で 3DCG に触れるようになった人種からすると、研究としてしっかり取り組んでらっしゃる方の講義は参考になることがたくさんありましたし、とても有意義でした。
デモをみんなで見ながら盛り上がる!
作品をみんなで鑑賞する時間は、デモパーティーのなかでも最もエキサイティングな時間です。私もデモを見るのに集中しすぎてしまって、とても写真なんか撮ってる余裕がなかったです(笑)
出展されたデモは、pouet.net というデモ作品を投稿する老舗サイトで公開されています。
Tokyo Demo Fest 2015 の作品ページ:
TokyoDemoFest 2015 :: pouët.net
ここでは、Tokyo Demo Fest で設けられていた様々な部門のなかでも、花形となる「Combined Demo Compo」に出展された、高得点上位 5 作品をご紹介します。
第五位 転職騎士ガングリオン
転職騎士ガングリオン(The Job changing knight Ganglion) by Tomohiro
youtube:転職騎士ガングリオン - YouTube
レイマーチングとラスタライズの合わせ技でシーンを描画しているらしいです。日本のデモ界では有名な Tomohiro さん。作品の雰囲気が独特ですが、やってることはやっぱりすごいですね。
ファッサファサ のファーを見ることができます!
第四位 mndrn
youtube:"mndrn" by Mandarine - YouTube
WebGL 版:mandarine.planet-d.net/prods/mndrn-mandarine-tokyo-demo-fest-2015/
はい出ました。こちらの作品はなんと WebGL です! 上記のリンクから実際にデモを実行させることができます。
シーンの作り方や見せ方など、デモに初挑戦だった私には到底到達できない領域で、とてもカッコよく仕上がっています。
第三位 LUNA
youtube:LUNA / MetroGirl - rushed capture ver. - YouTube
第三位は、MetroGirl というグループの作品である LUNA です。こんなデモがリアルタイムに PC 上で実行できてしまうなんて……すごい! すごすぎる!
流体の表現がなんとも美しく、また幻想的です。サウンドとの一体感も素晴らしいですよね。
第二位 blue impulse
blue impulse by primitive (.jp)
youtube:"blue impulse" by primitive - YouTube
こちらは Unity 製のデモで、Unity のなかの人でもある i-saint さんの作品です。
揺らめく水面と、光り輝くキューブが織りなす幻想的なシーンの連続に、思わずスゲエと声が漏れること間違いなしです。アブストラクトな表現の最上級クラスに間違いなく食い込む作品だと思います。
第一位 Optical Circuit
youtube:Optical Circuit by 0x4015@TDF2015 PC 4K Intro (FullHD 1080p) - YouTube
まー、なんというかー、正直 意味が分かりません!
この作品は単純にデモ作品として見ても間違いなく素晴らしいんですが、驚くべきはこれが「4k 作品」であるということです。
4k 作品というのは、デモを表示する実行ファイルのサイズを 4,096 byte 以下に抑えなければならないという、容量の縛りがあるデモ作品のジャンルのひとつです。たったの 4 キロバイトしかない実行ファイルを、ダブルクリックするだけでこんなものが画面にドーンと出てくるわけです。もちろん、再生されているサウンドも込みです。
映像と、音楽と、それらすべてを含めて 4,096 byte 以下に抑えた exe ファイルを作らないといけないのですね。それでこのクオリティですから、会場でリアルタイムに見ていた人たちも、そのあと pouet.net などで作品の存在を知った人たちも、みんな驚きを隠せません状態です。
とにかくすごいので、せめて動画でもいいので一度見てみることをオススメします。ちなみに、この作品の作者はあの「 超連射68k 」の作者と同じ方です。やっぱり神は神のまま、はるか雲の上にいらっしゃったんですね……
楽しいことはいいことだ!
デモパーティーに今回初めて参加しましたが、すごく感じたのは「やっぱり楽しいほうがいいよな!」ということでした。
ものすごく難しい数学や物理を駆使する 3DCG 界のスーパーエンジニアたちが、デモを見ているときや、デモの採点を集計している間の VJ イベント(下の写真です)のときには、まるで学生時代に戻ったかのようにテンション MAX なんですよね。この「みんなで楽しもう!」という雰囲気は非常にいいですね。
ストイックで、一種のスポーツのような側面さえある 3D の世界。一度でもその界隈にチャレンジしたことがある方なら、その難解さや求められる知識の高さに、思わず尻込みしたことがあると思います。
でも、実際にそんな世界で活躍している住人たちは、こんなにも明るく楽しい雰囲気で、みんなで盛り上がったりお互いを讃えあったりできるんだなってことが、私にはすごく新鮮な驚きでした。
映像が落ちるトラブルが突如発生! しかしそこはもうあんまり関係なくなってたの図(笑)
デモを再生していたバックスクリーンが落ちるトラブルがあっても、それならばとオーガナイザーがスクリーンの前に飛び出して踊りだす! それに反応してボルテージ上がっていく会場……すごい熱気!
ちなみに翌日の Twitter には筋肉痛になってるかた多数見受けられました(笑)
ぜひみんなも参加しよう!
イベントの最後の最後、表彰式が行われます。毎年デザインの違うトロフィーが部門ごとに用意され、上位入賞者には商品と共に渡されるのが通例となっています。
今回はリモートで作品を出展していた人が多かったので、実際に会場でトロフィーを受け取れなかった人も結構いらっしゃったみたいでした。残念!
私の出展した作品は第六位でした。内心こっそり一人で興奮していました。
一応、こんな感じで表彰というシステムがありますが、作品を出展しなくても、本当に楽しめるイベントです。
作品を出すにしても、なにもド派手なデモを作らなくてもいいんです。グラフィックスのみやサウンドのみ、あるいは Android などの特殊なデバイスを使った作品など、本当に広い分野を対象に作品の受付けは行われています。自分の得意な分野で、軽い気持ちでチャレンジすればいいんじゃないかなって、個人的には思いました。
みんなで楽しく、知見を広げたり、人脈を広げたり、そんな感じでもいいと思うのです。本当に楽しい時間を過ごすことができるので、少しでも興味があるのなら、来年はぜひ会場にいらしてください。
もちろん、自分で何かしらの作品を出展することのほうが遥かに楽しいです! これは断言できます。自分の作品が上映・再生されているときの、あの会場の雰囲気は独特で、これはなかなか他では味わえません。ぜひ自身で作品を出されることを強くオススメします。
この記事を読んで、少しでもデモシーンに興味を持ってくれる人が増えてくれたら嬉しいです。来年の Tokyo Demo Fest でお会いしましょう!