感動が止まらない! 驚きの WebGL ショートムービー Through the Dark
売上が基金に寄付されるチャリティーデモ
今回ご紹介するのは、Google Play Music 公式の WebGL 製のショートムービー作品で、平たく言ってしまえば BGM として流れているとある楽曲のプロモーションサイトです。
しかし、個人的には今回のサイトは、それがあくまでビジネス的な戦略のひとつだとわかっていても、大きな感動なしには見られない、素晴らしい作品だと感じます。
このショートムービーは、わずか 8 歳で白血病と診断された男の子と、その父親の物語を元にしているそうです。男の子の目線と、父親の目線。このふたつの視点から描かれる世界の違いを、WebGL を利用した 3DCG によって見事なまでに描き出しています。
正直、ちょっと震えました。感動しました。
ひとりでも多くの人に、見てもらいたい。そんな作品です。
モバイル対応の見事な完成度の一品
今回のサイトのテーマソングは、Hilltop Hoods というオーストラリアのヒップホップのグループのものです。そして、このグループのメンバーのひとりである Daniel Smith さんが、このストーリーの登場人物のひとりである「父親」にあたります。
息子の看病のために病院に通う日々のなかで生み出された一曲、それが今回のサイトに使われている楽曲なのですね。
WebGL の描画では、全体に白と黒、このコントラストに終止しています。そして、この明暗のくっきりと別れている表現は、そのまま父親目線と息子である男の子の目線という、ふたつの現実をリアルに描き出します。
描画そのものはローポリゴンなモデルで描かれていきますが、この親子の物語とその背景を知った上で見ていくと、とてつもなく切ない、恐ろしいほどのリアリティのある作品なのだと思い知らされます。
デモはウェブのコンテンツらしくインタラクションを上手に取り入れており、スクロール操作や、マウスカーソルの移動によってシーンに影響がリアルタイムに反映されるようになっています。
非常に素晴らしいと感じるのは、このスクロール操作によってシーンに及ぶインタラクションな変化です。
描き出されるシーンは多くの場面で、上と、下という、ふたつの領域に分かれて描かれていきます。
画面上でスクロール操作を行うと、この上の領域と下の領域を、ちょうど水面ギリギリから顔を出したり潜ったりするかのように、自在に行き来することができるようになっているんですね。
上下どちらのシーンも非常に考えられた構成になっており、シンプルなポリゴンモデルながら滑らかなアニメーションがとても秀逸で、いいようのないリアリティがあります。
このスクロールを使ってふたつの世界を同時に描くという手法、本当に発想からしてすごいです。
そして、それをウェブ上でインタラクティブにユーザーに操作させながら見せるというのがさらに驚きですね。考えた人は神なのか……
重厚で、切ない、その物語の静けさに無言で見入ってしまいそうになります。でもどっちのシーンも見たいし、気になって仕方がないし、せわしなくスクロール操作をしてしまいそうになる。
繰り返し、何度も見たくなるような、ほんとすごいデモですねこれは。
今回のコンテンツはモバイル端末でも見ることができるようになっているようで、ジャイロセンサを用いることで、モバイル端末での閲覧であってもふたつの世界を行き来できるようになっているようですね。
PC を用いて高解像度なディスプレイで見ていると、若干デモの解像度が低く感じる方もいるかもしれませんが、これははじめからモバイルでも動作することを想定して、ある程度解像度を制限しているためなのかもしれません。
しかしスマートフォンをぐるりと上下反転させたら世界が入れ替わるようになってるというのも、この発想もやっぱりすごいです。
とにかくすごいすごいばかり言ってしまってますが、細かいところまで、本当に練られた素晴らしいコンテンツですね。
今回のサイトでデモの実行中に流れる楽曲は、Google Play Music で、今は期間限定で無料配信されています。
また、この楽曲の売上の一部は、がん基金に寄付されるとのこと。
なんていうか、どこまでも非の打ち所が無いというか、思わず参りましたと頭を垂れてしまいそうな、驚くべき作品だと個人的には感じました。
すごいデモ作品を見つけたときというのは、早く自分が見つけたこのデモをいろんな人にも見せたい・知らせたい、というふうに感じます。でも、今回の作品はそういう感覚とちょっと違った意味で、ひとりでも多くの人に見てもらいたい。そう思わせる何かがあります。
私も年を重ねたせいか、こういうテーマに心を打たれやすくなっているのかもしれません。
しかしそんなことを差し引いても、インタラクションやモバイル実装部分も含め、かなりハイレベルな領域で煮詰められた、見事なコンテンツだと思います。
ぜひチェックしてみてください。