牧歌的な雰囲気に轟く銃声! よくわからない世界観がこころをえぐる不思議な作品 Blue Shadows
見る人を選ぶ可能性もあるのでちょっと注意
今回ご紹介するのは、WebGL 製のインタラクティブなデモ作品で、ユーザーがシーンに干渉することの可能なショートムービー風の作品です。
今回の作品の驚くべきところは、まず第一にその圧倒的で独特な「センス」にあると思います。こんなものを作れる感性……いったいどのような人なんだろうと考えてしまいます。これは、良くも悪くも、という意味で。
もしかすると、このセンスを悪いものとして捉えてしまう人も、なかにはいるかもしれません。しかしそれは、この作品の持つ不思議な「リアリティ」が、あまりにも見事に仕上がっているからに他なりません。
美しいレンダリングと物理演算
今回の作品は 3DCG 作品として見たときに非常に見どころの多い素晴らしい出来栄えです。
ユーザーは基本的にムービーを眺めているように、何もせずにただ見ていることもできますが、マウスを使ってシーンに干渉することも可能です。
ただ、その干渉の仕方が今回の場合はちょっとショッキングと言いますか、銃を使って対象を撃ち抜くという、ちょっとだけエグい感じの演出になっています。
なにも、人間やかわいい小動物が出てくるので倫理的につらいとか、そういうことではないのですが……
思わず息を呑む不思議なリアリティがそこには描かれます。
地球ではない、宇宙のどこか。
まるで月面か、あるいは溶岩が冷え固まった大地のような、不思議な世界。
それがこのデモの舞台です。ほとんど植物なども見当たらないこの灰色の世界のなかには、地球上ではけして見ることのできないような、不思議な生命たちが暮らしています。
その動きは物理演算をベースにした非常にリアルなもので、まあなんていうか、生き物っぽくない外見なのに、生き物っぽいです(矛盾)
そして、キャプチャ画像はかなり縮小してしまっているのでわかりにくいのですが、画面の左下には微妙にライフルの弾薬のようなアイコンが映っています。
これが、ユーザーがシーンに干渉する唯一の手段である「銃撃」のための残弾数を表しています。
大気を切り裂くような、鋭い銃声と共に放たれる弾丸は、レンダリングこそされませんが、射撃した瞬間には画面が大きく揺らぎ、迫力があります。
そして、もうおわかりかと思いますが、謎の生命体たちにはきちんと当たり判定が設定されており、攻撃されると吹き飛んだり、力なく動かなくなったりします……
なんか、よくわからないけど……苦手な人は撃たないほうがいいと思います。
そのくらい、なんというか、生き物を攻撃している感触が気持ちにぐさっと刺さってくるような、妙に生々しいリアリティがあります。
先ほども書いたとおりで、今回のサイトは CG としては非常によくできており、WebGL としてはかなり高いレベルの美しい岩や大気の表現が見事です。
また、物理演算をうまく利用した生命体たちの動きはとても生々しくて、まるで本当に生きているかのようです。
飛び跳ねるもの、あるいはウネウネと蛇のように動き回るもの、それらの動きもバリエーションに富んでおり見る人を飽きさせません。
私はどうしてもこう、なんていうか命を奪うようなことを楽しめないというか、エンターテイメントとして今回のサイトを見ることが難しかったのですが、そこに込められている作者の圧倒的なセンスには、ただただ脱帽といった感じです。
映像作品としても、またリアルな CG の描画や物理演算などの技術作品としても、とても高いレベルに到達している今回の作品。
URL を見ると「sketches」とあるのですが、とても小さなスケッチという品質を超えており、本当に驚きました。
見る人を選ぶようなところが若干あるとは言っても、のっけからいきなりグロい表現があるとか、そういったことはありません。CG が描かれている間に流れている BGM はカントリー風味の牧歌的な印象のもので、そのミスマッチがまた、ものすごい味のある雰囲気を作っています。
いったいどんな人がこれを作ったのだろうと、思わず考えさせられる、いろんな意味で興味深い作品だと思います。
ぜひチェックしてみてください。